JAU代表ソニーマイが考える、オーストラリアの色と形
7月9日から21日までTHINK OF THINGSで開催したポップアップにお越しくださった皆さま、そしてトークセッションにご参加くださった皆さま、本当にありがとうございました。トークセッションでは、コクヨでクリエイティブディレクター/プロデューサーを務める安永さんとご一緒することができました。シドニーと東京を行き来する私たち二人が、それぞれの街の暮らしやデザインについて語り合えたことは、私にとっても、とても楽しい時間でした。皆さまにも何か一つでも持ち帰っていただけたことがあったなら嬉しく思います。当日は時間が限られていたため、お話しできなかったことがまだたくさんあります。この文章は、その続きをお届けするつもりで書いています。「オーストラリアの色と形」を形づくっているもの、そして、私がなぜこれほどまでに日本とオーストラリアをつなぐ架け橋になりたいと願っているのか。そのことについて、もう少しお話しできればと思います。
JAUを立ち上げてから約5年、私たちはオーストラリアのデザインや文化を日本に紹介する活動を続けてきました。そのなかで、最もよくいただく質問の一つが、「オーストラリア・デザインとは何ですか?」というものです。実は、この問いに一言で答えるのは簡単ではありません。だからこそ、この文章も「定義」を示すものではなく、私自身がこれまで見てきたこと、感じてきたことをもとに、その輪郭を探ってみる試みだと思っています。
オーストラリアのデザインの歴史は、近代になって始まったものではありません。何万年にもわたって受け継がれてきた、アボリジニやトレス海峡諸島の人々の文化があります。土地との深い結びつきのなかで育まれた彼らのデザインやアートには、自然への敬意や物語が息づいています。ただ、ここで私が主に取り上げたいのは、その後の現代オーストラリアの歩みです。幾度もの移民の波によって、多様な文化が出会い、混ざり合いながら、今日のオーストラリア・デザインがどのように育まれてきたのか。その背景についてお話ししたいと思います。
現代のオーストラリアは、まだ若い国です。その文化も、いまなお形を変え続けています。私が「色と形」という言葉で表したいのは、単に見た目の色彩や造形のことではありません。そのデザインを生み出した人たちが、どんな環境で育ち、何に影響を受け、何を大切にしてきたのか——そうした背景そのものを指しています。ここでは、オーストラリアのデザイナーたちの考え方や価値観に影響を与えてきた文化や環境について、私自身の体験も交えながらお話ししていきたいと思います。
ここで少しだけ、私自身のことをお話させてください。私の両親は1980年代、戦争の余波を逃れ、難民としてベトナムからオーストラリアへ渡ってきました。私はオーストラリアで生まれ育ち、そして今は日本で家族を持ち子育てをしながら暮らし、仕事をしています。二つの国の間で生きてきたからこそ、「オーストラリアらしさ」とは何かを考える機会が多くありました。家族に安心して暮らせる場所と新しい人生を与えてくれたオーストラリアへの感謝を、日本の皆さんにもっと伝えたいと思っています。同時に、私は以前から日本の文化やデザイン、ものづくりに深い敬意を抱いてきました。日本が私のもう一つの故郷となった今は、その魅力を世界へ伝えることも、自分の役割の一つだと感じています。だから私が目指しているのは、一方通行ではありません。オーストラリアを日本へ紹介すること。そして、日本の魅力をオーストラリアへ、さらにその先へ届けること。デザインや文化を通して、人と人、国と国をつなぐ架け橋になることです。
AUSSIE Posters by Peter Drew
文化の混ざり合い
まずは、「人」の話から始めたいと思います。この約200年、オーストラリアは移民によって築かれてきました。新しい機会を求めて海を渡ってきた人もいれば、戦争や混乱から逃れ、新しい人生を求めてやってきた人もいます。
最初にオーストラリアへ渡ってきた移民はイギリスからでした。その後、1850年代のゴールドラッシュによって人口は約40万人から100万人を超えるまで急増し、ヨーロッパや中国からも多くの人々が移り住みます。1940年代には、第二次世界大戦後の混乱を逃れたリトアニア、エストニア、ポーランドなど東ヨーロッパの人々が数多く移住しました。1960〜70年代には、成長するオーストラリアの工場を支えるため、トルコやレバノンから多くの人々が渡ってきます。そして1975年以降は、戦火を逃れたレバノンの人々も新たに加わりました。1970年代後半から80年代にかけては、東南アジア、とりわけベトナムから大きな移民の波が訪れます。戦争とサイゴン陥落によって、多くの家族が故郷を離れざるを得ませんでした。私の家族も、その一つです。1990〜2000年代には、インドや中国からの技能移民が増え、オーストラリアの多様性はさらに広がっていきます。
こうして振り返ると、オーストラリアは決して均質な国ではありません。私が興味深いと感じるのは、これほど遠く離れた場所だと知りながらも、多くの人々が新しい人生を始めるためにこの国へやってきたことです。望んでそうした人もいれば、そうせざるを得なかった人もいましたが、いずれにしても、新しい環境に飛び込み、ゼロから暮らしを築くことを選んだということです。その気質は、国全体にも少なからず影響を与えているように感じます。
Sonny and friends in highschool
私が学生だった頃も、友人たちのルーツは本当に様々でした。フィンランド、オランダ、ギリシャ、マケドニア、イタリア、ロシア、トルコ、ポーランド、レバノン、台湾、香港、挙げればきりがありません。お互いの家族がどこの出身かは自然と知っていましたし、ときにはその違いを冗談にすることもありました。でも、それで距離を感じることはありませんでした。違うことは、ごく当たり前だったからです。振り返ってみると、この「違うことが当たり前」という感覚こそ、多くのオーストラリア人のおおらかさや、人を受け入れる姿勢につながっているように思います。
それは同時に、文化が静かに混ざり合っていくということでもあります。友人の家を訪ねるたび、それぞれの家族が故郷の暮らしを大切にしていることが伝わってきました。フィンランド人の友人の家は、木の床と木の家具に囲まれた温かな空間で、裏庭にはサウナまでありました。ギリシャ人の友人の家にはタイル張りの床とレンガ造りの庭、そしてプールがあり、まるで地中海の家のようでした。レバノン人の友人の家では、庭にシーシャ(水たばこ)が並び、ご両親がバクラヴァ(甘いお菓子)やザータル(ミックスハーブがのったピタパンのようなもの)を勧めてくれました。そして私の家にも、ベトナムの屋台で使われている小さなプラスチックの椅子がありました。今でも、お香を焚き、ご先祖様に祈る習慣が残っています。
Sonny and friends in grade 11 of highschool
子どもの頃は、それが特別なことだとは思っていませんでした。でも今振り返ると、そんな環境の中で自然と身についた感覚があります。「正しい暮らし方は一つではない」ということです。誰かにとって当たり前のことが、別の誰かにとってはまったく違うこともある。そして、そのどちらも間違いではありません。私は、この感覚がオーストラリアのデザインにも表れていると思っています。「こうあるべき」という唯一の正解がないからこそ、新しい考え方を柔軟に受け入れ、異なる文化から自由に学び、それらを自然に組み合わせていくことができるのです。それは意識的な場合もあれば、本人も気づかないほど自然な場合もあります。そして、もう一つ大きな特徴があります。オーストラリアには、「誰がデザイナーになるべきか」を決めるような長い伝統や固定観念があまりありません。
Chub, Window chair and Block by Fearon
そのことをよく表しているのが、Fearonというブランドです。JackとMark兄弟は、もともと家具デザイナーではありませんでした。Jackは配管工、Markはボイラー製缶工として、大型トラックの貯水タンクを製作していました。二人とも、デザインの専門教育を受けた経験はありません。最初のスツールは、工房で余った金属を試しに加工していたことから生まれました。それが評判を呼び、今では家具ブランドとして知られる存在になっています。彼ら自身、自分たちにデザインの経歴がないことを、むしろ前向きに捉えています。「デザインとはこうあるべき」という既成概念に縛られず、自分たちが本当に良いと思えるものを形にできるからです。
MAHO Sensory Gypsy Wood Incense and R.L.Foote Design Mochi Incense Holder
もう一つ印象的なのが、Joshua Tongが手がける MAHŌ Sensoryです。彼は幼い頃、母親から「お香は祈りを天へ届けるものだ」と教えられました。私自身が家でお香を焚いている理由とも重なる、とても親しみを感じる話です。けれど彼は、その伝統をそのまま受け継ぐのではなく、新しい形へと発展させました。アジアのお香文化に、西洋のフレグランスのような繊細な香りの設計を取り入れ、さらに香立ても石や金属を使った現代的なデザインへと生まれ変わらせています。アジアの文化と西洋のデザイン、そのどちらかを選ぶのではなく、二つを自然に掛け合わせ、新しい価値を生み出しているのです。こうした姿勢は、オーストラリアのデザインを見ていると決して珍しいものではありません。
職人からデザイナーになった人もいれば、異なる業界から転身した人もいる。また別の国からやってきた人もいます。それぞれが異なる経験や文化を持ち寄り、自分らしいものづくりへとつなげています。それこそが、私が考えるオーストラリア・デザインの魅力の一つなのです。
Foundry, by Dina Grinberg, 2022
孤立
オーストラリアは、地理的に世界の他の地域から遠く離れた国です。移民たちは、さまざまな文化を携えて、この遠い大陸へやってきました。シドニーから最も近い海外の大都市であるジャカルタやシンガポールでさえ、飛行機で少なくとも6時間かかります。オーストラリアに暮らすということは、ある意味で、物理的に世界の他の地域から切り離されているということでもあります。
この「遠さ」は、デザインやものづくりにも、具体的なかたちで影響を与えているのではないでしょうか。オーストラリアには、かつてのような大規模な製造業がほとんど残っていません。国内市場も小さいため、デザイナーが図面を大きな工場に渡し、あとは製品ができあがるのを待つ、というものづくりは簡単ではありません。その代わり、多くのデザイナーは自分たちの手でものをつくったり、近くにいるデザイナーやメーカーと協力したりしながら、少量生産で製品をつくっています。アイデアや新しいものは、こうした制約の中から生まれることも少なくありません。
Surface Sconce in Blackened Bronze by Henry Wilson, imagery by THINK OF THINGS
たとえば、Henry Wilsonの作品を見てみましょう。彼は、普段は鉱山機械や鉄道車両、自動車などの金属部品を鋳造している地元の鋳造所と組み、いつもとは違うものづくりを試してみたいと考えました。彼がつくりたかったのは、工業製品ではなく、住まいの中に置かれる彫刻のようなもの。そうした実験から生まれたのが、彼の代表作「Surface Sconce」です。
Honey Lamp by Coco Flip
市場が小さく、世界から遠く離れていることは、デザインの世界に、もう一つの特徴をもたらします。それは、互いのつながりが強いデザイン・コミュニティです。オーストラリアのデザインの世界は、ほとんどの人がお互いを知っているほど小さなコミュニティです。一見すると、それは制約のようにも思えます。でも、実際には大きな強みです。金属を鋳造する人や陶器をつくる人にも、電話一本で相談できますし、デザイナー同士も競い合うというより、互いに助け合う傾向があります。
Coco Flipの「Honey」ランプは、そうしたつながりから生まれたものの一つです。一つの製品をつくるために、複数の地元の作り手が関わっているのです。メルボルンの数ブロック先にあるR.L. Foote Design Studioが陶器の台座をつくり、地元のガラス職人がシェードを一つひとつ手吹きで仕上げています。
自然
世界から遠く離れたオーストラリアですが、その距離がかえって、人々と自然との距離を近づけているように思います。オーストラリアでは、どこに住んでいても、自然を身近に感じることができます。私はシドニー南西部で育ちましたが、クロヌラ・ビーチまでは車で25分ほど、近くの小川までは歩いて10分ほどでした。シドニーの中心部にいても、シドニー湾まで歩いて行くことができますし、ボンダイのようなビーチにもすぐに出られます。
そして、自然との近さは、単に距離の問題ではありません。街そのものが、自然とのつながりを意識してつくられているのです。オーストラリアでは、ほとんどの自治体が、新しい建物に植栽のためのスペースを設けたり、近くに公園や緑地を確保したりすることを求めています。
こうした環境は、デザイナーの考え方にも影響を与えます。日常のすぐそばに自然があることが、自然を尊重するという感覚の土台になっているのです。オーストラリアのデザイナーたちは、「サステナビリティ」という言葉が今のように、広く使われるようになるずっと前から、持続可能であること、長く使えること、そして質の高いものをつくることについて語ってきました。(今では、たとえマーケティングのためであったとしても、より多くの人がこうしたことを語るようになったのは、良いことだと思います。忘れてしまうより、心に留めておくほうがずっといいのです)。
KeepCup, the original Barista standard reusable cup brand
オーストラリアで暮らしていた頃から、私が特に敬意を抱いてきたブランドの一つが、メルボルン生まれのリユースカップブランド、KeepCupです。KeepCupとは、バリスタが扱いやすい規格でつくられた、世界で初めてのリユースカップを生み出しました。カフェやジュースショップに自分のカップを持って行き、そこに飲み物を入れてもらうという、新しいスタイルを提案したのです。この製品には、オーストラリア・デザインをかたちづくる、いくつかの特徴が表れています。まず一つは、「当たり前」とされていることに疑問を持ち、新しいやり方を試してみる姿勢です。当時、自分のカップをカフェに持って行き、そこにコーヒーを入れてもらうという発想は、一般的ではなく少し変わったものでした。それでも、創業者のAbigail Forsythは、当時の「当たり前」に疑問を投げかけました。そしてKeepCupは、やがてオーストラリアのカフェ利用者の間に、一つのムーブメントを生み出していきます。もう一つは、自然への敬意です。できるだけ無駄を減らし、繰り返し使えるものは繰り返し使う。そんな考え方も、KeepCupには込められています。今では、世界中でさまざまなリユースカップがつくられ、多くのカフェで受け入れられるようになりました。
Seven Seeds Coffee Roasters in Melbourne, imagery by Gareth Sobey
オーストラリア人が集う場所
日々の暮らしの中には、オーストラリア人のデザインに影響を与えている、もう一つのものがあります。少し意外かもしれませんが、それは「カフェ」です。トークの中でも、安永さんがオーストラリアのカフェがいかに日本と違うかについて触れていました。オーストラリアのカフェは朝早く、午前6時頃には開き、午後3時頃には閉まります。オーストラリア人は、朝のコーヒーを中心に一日のリズムをつくるのです。バリスタは、どこか友人のような存在です。名前を覚えていてくれて、週末はどうだったか、最近どうしているのか、そんな何気ない話を交わします。私たちはそこで朝の打ち合わせをしたり、仕事に向かう前に同僚と会ったり、昼食のあとにまた立ち寄ったり、週末には友人と顔を合わせたりします。カフェは、オーストラリアの暮らしの中心にあるのです。
The Italian Forum 2000 (Leichart, Sydney) imagery by Quentin Jones
オーストラリアでは、朝早くから一日が動き始めます。朝一番のコーヒーを飲み、7時半から8時頃には職場へ向かう。そしてカフェが閉まる午後3時頃には仕事を終えて家に帰り、午後の残りの時間は自分のために使います。オーストラリア人はよく働きますが、同時に、仕事から離れて自分の時間に切り替えることも大切にしています。仕事と暮らしのバランスを、とても大切にしているのです。
こうしたコーヒー文化をオーストラリアにもたらしたのは、移民たちでした。特に第二次世界大戦後にやってきたイタリアやギリシャのファミリーたちです。彼らはエスプレッソを持ち込んだだけではありません。コーヒーを囲んで人と人がつながる、その社交の文化も一緒に持ち込んだのです。私は子どもの頃、シドニーのイタリア人街ライカートを訪れた時のことをよく覚えています。そこには「The Italian Forum」という場所があり、地元のイタリア系の家族やその友人たちが、時間を問わず集まっていました。コーヒーを飲みながら、食べたり、話したり。そこには、いつも人が集まる温かな空気がありました。その頃から育まれてきた温かさが、今のオーストラリアのカフェ文化へとつながっています。今では、さまざまな人がカフェを訪れ、友人と会ったり、人と交流したり、仕事の打ち合わせをしたりする場所として使っています。カフェは単にコーヒーを飲む場所ではなく、人が集まり、つながるための場所なのです。
Coco Flip in MIA MIA Tokyo, imagery by dolive media
その一端は、ここ日本でも感じられるかもしれません。ここ数年、東京のカフェでも、オーストラリアのカフェやオーストラリアスタイルのカフェを見かけるようになり、「フラットホワイト」もメニューに並ぶようになりました。東京・東長崎にあるMia Miaを訪れたことがあれば、その明るく陽気な雰囲気を感じてもらえると思います。オーナーのVaughanが、お客さん同士の間に自然と親しげな空気をつくりながら、オーストラリアスタイルのコーヒーやワインを楽しめる場所です。ほかにも、シドニー発のSingle Oのように、今では東京に店舗を構え、オーストラリアと変わらないクオリティのコーヒーを届けているカフェもあります。なかには、タップからコーヒーを注ぐ「コーヒー・オン・タップ」まであります。
でも、オーストラリア人が集まるのはカフェだけではありません。家に人を招くことも大好きです。裏庭でバーベキューをしたり、友人を夕食に招いたり。キッチンに集まっていた人たちが、そのまま裏庭やバルコニーへとあふれていくこともあります。日本に移り住んでから、私はその違いを感じるようになりました。日本では、レストランや居酒屋など、家の外で人と集まることが多いように思います。一方、オーストラリアでは、自分の家を人に開くことが多いのです。つまり、カフェと同じように、家もまた人が集まるための社交の場なのです。
では、こうした「人が集まること」と、デザインにはどんな関係があるのでしょうか。私たちの暮らしの多くは、人と人が集まる共有の空間の中で営まれています。食事をしたり、話をしたり、仕事をしたり、くつろいだり。私たちはそうした場所に集まり、そして、その空間がどんな雰囲気であるかを大切にします。それは、デザイナーがつくるものにも自然と影響します。オーストラリアのデザインには、人が集まる場所のためにつくられたものが多くあります。存在感があり、ときには大胆でありながら、空間の中で強く主張しすぎることはない。そして、どこか遊び心がある。そうした特徴については、次の章でもう少し詳しく見ていきたいと思います。
Colours and Forms of Australia Exhibition (2026), imagery by THINK OF THINGS
では、その「色と形」とは?
では、これまで見てきたこと——私たちは何者なのか、どこにいるのか、自然とどう暮らしているのか、そしてどこに集うのか——を踏まえて、今度は文字どおりの「色と形」に目を向けてみましょう。まず言えるのは、オーストラリアのデザインは、思っている以上に遊び心があり、実に多彩だということです。
たとえば「色」。私は、オーストラリアの強く明るい太陽の光が、色の使い方にも影響していると思います。穏やかな光の土地ではなかなかできないような、大胆な色使いが自然と生まれるのです。一方では、Lightlyのような色使いをするブランドもあります。Lightlyのプランターには、遊び心のある形と鮮やかな色が使われています。ビビッドな青や黄色、温かみのある赤や緑。どれも、目を引く色合いです。Fearonのアルミニウム製の家具も、同じように大胆な色使いが特徴です。そして、もう一方には、私がとても尊敬しているCoco Flipのようなスタジオがあります。こちらは、柔らかな曲線と、静かで落ち着いた色調を使ってデザインしています。でも、よく見ると、そこにもさりげない遊び心があります。
Ceto Wall lamp by Ross Gardam, imagery by Sonny Mai
こうした幅広さは、素材の選び方にも表れています。オーストラリアのデザインには、素材をありのままに生かそうとする傾向があります。特に、鋳造した真鍮やブロンズ、アルミニウムなど、金属そのものの表情を生かしたものが多く見られます。あえて仕上げを施さず、素材の表面や、どのようにつくられたのかがわかる痕跡を残すことも少なくありません。その中でも、Studio Henry Wilsonは、より素材の粗さや生々しさを前面に出した仕事をしています。一方、より洗練された、ラグジュアリーな方向で仕事をしているのがRoss Gardam(ロス ガーダム)です。それでも、彼の作品の多くは手仕事によってつくられています。すりガラスや真鍮といった素材を、これまでとは違う新しい形へと導いているのです。
もし、彼らのデザインに共通するものを一つ挙げるとしたら、それは色でも、特定の素材でもありません。それは、遊び心があること。素材に正直であること。そして、長く使えるものを、手をかけてつくること。私は、この3つがオーストラリアのデザインに通じる大切な特徴なのだと思います。
Sonny Mai at 'Colours and Forms of Australia' student talk session, imagery by Naoki Shimakawa
架け橋
こうして見ていくと、オーストラリアのデザインにはさまざまなものを受け入れ、そこから新しいものを生み出していく自由さがあります。異なる文化が混ざり合い、その影響を受けながら形づくられてきたこと。世界から遠く離れた場所にあるからこそ生まれる、自由な発想と創造性。そして、自然やその光、素材に寄り添いながら、長く使えるものをつくろうとする姿勢。そうした背景の中から、遊び心のある形や、素材の持ち味を生かしたデザイン、人が集まり、そこで過ごす時間をを思いながらつくられたものが生まれています。
私は、こうしたものの背景にある文化や環境まで含めて知ることで、オーストラリアのデザインをより身近に感じてもらえたらと思っています。ここでお話したことが、その背景を知るきっかけになっていれば嬉しく思います。ここで触れたテーマについては、今後も、もう少し掘り下げていきたいと思っています。
そして、私たちがJAUとしてやっていきたいのは、こうした「架け橋」を、これからもっと増やしていくことです。オーストラリアのデザインや文化を、もっと日本に紹介すること。そして、日本のデザイナーや作り手と、オーストラリアのデザイナーをつなぎ、互いのアイデアや技術を持ち寄りながら、一緒にものづくりをしていくこと。
私たちはこれまでにも、オーストラリアと日本のあいだに、いくつかの小さな橋を架けることができました。その一つひとつを、とても大切に思っています。そして、これからも、こうしたつながりを一つずつ増やしていきたいと思っています。国や文化を越えて、お互いを知り、学び合い、そこから新しいものを一緒につくっていく。私は、そうした小さな交流の積み重ねが、二つの国をより近くにしていくのだと思います。
もし、オーストラリアと日本をデザインや文化を通してつなぐことについて、何かアイデアやご一緒できそうなことがあれば、ぜひ気軽に声をかけてください。
ここまで読んでくださり、本当にありがとうございました。
「オーストラリアの色と形」
東京・千駄ヶ谷のTHINK OF THINGSにて、日本ではまだ体系的に紹介されることの少ないオーストラリアの現代デザインを紹介する企画展「オーストラリアの色と形」を開催いたします。
オーストラリアの自然や暮らし、文化の中で育まれた独自の色づかいと素材表現に焦点を当て、多彩なデザイナーやスタジオの作品を展示・販売します。
企画展・関連プログラム詳細
会場:THINK OF THINGS 1F(企画展)、2F(トークセッション)
会期:企画展7月9日(木)〜21日(火) / 関連企画トークセッション7月10日(金)
料金:企画展入場無料 / トークセッション一般 ¥1,100+ワンドリンク制 / 学生向けトークセッション ¥550
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